Rival Seeker

OSINTとは

OSINT(オシント)とは、公開情報を集めて分析し、判断に役立つ知見を引き出す活動です。意味・情報源・進め方・注意点を分かりやすく解説し、特許情報で競合企業の開発を読み解く活用例も紹介します。

更新日:監修:留場 恒光(弁理士・理学博士)

OSINT(オシント)とは、誰でも入手できる公開情報を集めて分析し、 判断や意思決定に役立つ知見を引き出す活動のことです。もともとは安全保障の分野で使われてきた言葉ですが、 現在ではサイバーセキュリティ、企業の競合調査、取引先のリスク確認など、ビジネスの幅広い場面で活用されています。

この記事で分かること

  • OSINTの意味と、「情報」と「インテリジェンス」の違い
  • OSINTで使われる主な情報源と、基本的な進め方
  • ビジネスでの活用分野と、守るべき注意点
  • 特許情報を使って、競合企業の開発動向を読み解く方法

OSINTの意味

OSINTはOpen Source Intelligence(オープンソース・インテリジェンス)の略です。 ここでいう「オープンソース」は、ソフトウェアのオープンソースではなく、公開されている情報源という意味です。

情報を集める方法には、ほかにも人から話を聞くHUMINT(ヒューミント)や、通信を傍受するSIGINT(シギント)などがあります。これらと比べて、OSINTは合法的に誰でも入手できる情報だけを使う点が特徴です。 「公開情報だけで分かることなど限られている」と思われがちですが、実際には公開情報を丁寧に集めて組み合わせるだけで、 驚くほど多くのことが見えてきます。

「情報」と「インテリジェンス」の違い

OSINTを理解するうえで大切なのが、「情報」と「インテリジェンス」の違いです。

区分意味例
情報(インフォメーション)集めただけの、加工されていない事実やデータ「A社が今年、音声認識の特許を30件出願した」
インテリジェンス情報を分析・評価し、判断に使える形にした知見「A社は音声認識に開発リソースを集中させており、新しいスマート家電を準備している可能性が高い」

ニュースやデータを眺めるだけではOSINTとはいえません。目的に沿って情報を集め、分析して意味を引き出すところまで行って、 はじめてインテリジェンスになります。

OSINTで使われる主な情報源

情報源分かることの例
ニュース・報道業界の動き、企業の提携や新製品の発表
企業の公開資料有価証券報告書・IR資料・プレスリリースから、業績や事業方針、投資の方向性
公的なデータベース特許・商標、法人登記、統計データなどから、技術・権利・組織に関する客観的な事実
学術論文・学会発表研究テーマや研究者のつながり、技術の最新動向
求人情報募集職種やスキルから、企業が強化しようとしている分野
Webサイト・SNS製品情報、イベント登壇、経営者や社員の発信

ひとつの情報源だけでは断片的でも、複数を組み合わせることで、全体像や「次に起こりそうなこと」が見えてきます。

OSINTの進め方:インテリジェンス・サイクル

OSINTは、やみくもに情報を集めるのではなく、インテリジェンス・サイクルと呼ばれる手順に沿って進めるのが基本です。

インテリジェンスサイクル1. 目的設定2. 収集3. 整理4. 分析5. 共有・活用6. 評価・見直し
評価・見直しの結果を次の目的設定に生かし、サイクルを繰り返して精度を高めます。
  1. 目的設定 「何を知りたいのか」「その結果を何の判断に使うのか」を明確にします。最も重要な工程です。
  2. 収集 目的に合った情報源を選び、情報を集めます。
  3. 整理 重複を除き、日付や対象ごとに並べ替えるなど、分析しやすい形に整えます。
  4. 分析 情報同士の関係や変化を読み解き、意味や示唆を引き出します。
  5. 共有・活用 分析結果を、意思決定する人に伝わる形でまとめて共有します。
  6. 評価・見直し 目的に対して十分な答えが得られたかを確認し、次のサイクルに生かします。

OSINTの主な活用分野

分野活用の例
競合・市場調査競合企業の新製品や開発の方向性、参入しようとしている市場を把握します。
サイバーセキュリティ攻撃者の視点で、自社に関する情報がどこまで外部に公開されているかを確認します。
取引先・与信の調査取引を始める前に、相手企業の実態や評判、リスクを確認します。
リスク管理サプライチェーンや海外拠点に関わる事件・規制の動きを早期に察知します。
報道・ファクトチェック公開された画像や記録から、出来事の事実関係を検証します。

OSINTを行うときの注意点

  • 合法・倫理的な範囲で行う 不正アクセスやなりすましによる情報取得はOSINTではなく、違法行為です。Webサイトの利用規約や個人情報保護法にも配慮が必要です。
  • 情報の信頼性を確かめる 公開情報には誤りや古い情報も含まれます。できるだけ一次情報にあたり、複数の情報源で裏付けを取りましょう。
  • 情報の多さに振り回されない 公開情報は膨大です。目的を絞らないと、集めるだけで終わってしまいます。
  • 思い込みで解釈しない 自分の仮説に合う情報ばかりを集めてしまう偏りに注意が必要です。

活用例:特許情報で競合企業の開発を読み解く

企業の技術開発を知るためのOSINTで、特に役立つ情報源が特許情報です。

特許情報がOSINTに向いている理由

  • 誰でも無料で見られる 特許出願は原則として出願から1年6か月後に公開され、特許情報プラットフォーム(J-PlatPat)などで誰でも閲覧できます。
  • 技術の中身が詳しく書かれている 製品のカタログやニュースでは分からない、技術の仕組みや狙いまで記載されています。
  • 製品発表より前の動きが分かる 特許は製品の発売前に出願されることが多く、企業が「これから」何に取り組むのかを示す手がかりになります。
  • 整理されたデータである 出願人・発明者・技術分類・日付などが決まった形式で記録されているため、大量の件数をまとめて分析できます。

ただし、出願から公開までに約1年半、特許として登録されるまではさらに時間がかかるなど、タイムラグがある点には注意が必要です。最新の動きは、ニュースやプレスリリースなど他の情報源と組み合わせて補います。

発明者に注目すると「開発チーム」が見えてくる

特許には、発明に関わった発明者の名前も記載されています。同じ特許に名を連ねる発明者同士のつながりをたどると、 企業の中で一緒に開発している開発チームが浮かび上がります。この分析には、つながりを点と線で可視化する共起ネットワークという手法が役立ちます。

どのチームが、どんな技術を、どれくらいの人数で開発しているのか。組織図や製品情報からは分からない企業の開発体制を、 公開情報だけで推し量れるのが、特許情報を使ったOSINTの強みです。

特許情報とWeb上の情報を組み合わせる

OSINTでは、複数の情報源を組み合わせることで分析の価値が高まります。開発チームの特許から読み取れる技術を、 Web上で公開されている商品・サービスの情報と結びつければ、「このチームの技術は、あの製品に使われている」という見立てまで立てられます。

Rival SeekerのAI要約画面。開発チームの技術の全体像と、関連する商品・サービスが出典付きで表示されている
開発チームの特許の要約と、関連する商品・サービスを出典付きで表示した例(画面はRival Seekerの分析結果の一例です)。

また、公開情報だけを使う分析は、自社の機密情報を外部に入力する必要がありません。 競合だけでなく自社の特許を客観的に見直すときにも、安心して取り組めます。

まとめ

  • OSINTとは、公開情報を集めて分析し、判断に役立つ知見(インテリジェンス)を引き出す活動です。
  • 目的設定から評価・見直しまでのインテリジェンス・サイクルに沿って進めるのが基本です。
  • 競合調査やセキュリティ、取引先調査など幅広く使われますが、合法・倫理的に行い、情報の信頼性を確かめることが欠かせません。
  • 特許情報は、企業の開発動向や開発チームを読み解くための、OSINTの代表的な情報源です。

特許情報から実際にどのようなことが分かるのかは、Googleの特許を分析した事例もぜひご覧ください。

この記事の監修者

留場 恒光とめば ひさみつ

弁理士・理学博士/IPdash東京特許事務所 代表

日本弁理士会認定 知財経営コンサルタント。

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